遺言

 遺言とは、遺言者が死亡する前に、その最終の意思表示を形にしておき、死後に実現を図るものです。
 遺言がない場合には、民法で定められた法定相続分(右図参照)通りに、遺産を分けることになります。しかし、遺言者自身が自ら築いた財産の行方については、遺言者自身が原則として自由に決められます(遺言自由の原則)。ただし、遺言は人の死後に効力が生じるものであるため、一定の厳格な方式に従わなければなりません。つまり、死人に口なしということで、せっかくの遺言が無効とならないためにも、かならず法律で定められた方式によらなければならないとされています。

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一問一答

遺言に関するあれこれ

Q.1

なぜ遺言が大事なのですか。

 相続が開始した場合には、すでにご本人はお亡くなりになられており、希望を述べることができません。相続でもめることを未然に防ぐには、遺言を書いておくことが一番効果的です。

Q.2

まだ遺言を書くには早すぎると思っています。

 遺言を書くことは自分の最後のことを考えるようであり、心理的に抵抗がある方もいるようです。しかし、残念ながら、遺言を書こうと思っている間に、認知症になってしまったり、お亡くなりになってしまい、手遅れになってしまうケースがたくさんあります。
 大切なご家族を守るためにも、ご自分の意思を貫くためにも早めに遺言を書くことをお勧めします。
 なお、遺言は、いつでも書き直すことが可能です。

Q.3

遺言を書くときには、遺留分に配慮しなければなりませんか。

 民法は、一定の相続人には、最低限の相続権を確保しようとして、遺留分を定めています(遺留分を有するのは、法定相続人のうち、兄弟姉妹以外の者、すなわち、配偶者、子ども、直系尊属です。遺留分割合は、直系尊属のみが相続人であるときは被相続人の財産の3分の1、その他の場合は、被相続人の財産の2分の1です。)。
 一般的には、死亡後にトラブルにならないように遺留分に配慮する遺言を書くことが望ましいとされていますが、遺留分に反する遺言を書くことも可能です(遺留分を侵害されている人が侵害されていることを知ってから1年以内に遺留分減殺請求権を行使しなければ、原則として、遺言通りに相続が行われます。)

Q.4

特に遺言書を作成した方が良いのはどういう場合ですか。どういうことに注意して遺言を作成したほうが良いですか。

① 自宅以外の財産があまりない場合

 まず、不動産を誰に相続させるかを決めます。
 不動産を相続しない相続人も納得してもらえるような工夫が必要です。

② 特定の子どもに財産を多く残したい場合

 財産をあまりもらえない相続人に納得してもらえる工夫が必要です。
 遺留分減殺請求を受ける場合も想定した遺言書を書く必要があります。

③ 相続人が多い場合、不仲な場合

 相続財産の分割方法を指定しておいたほうが良いでしょう。

④ 先妻の子と後妻の子がいる場合、認知していない愛人の子がいる場合

 トラブルになる可能性が非常に高いです。

⑤ 配偶者と兄弟がいるけど子どもがいない場合

 配偶者だけでなく兄弟も相続人となりますが、兄弟には遺留分がありません。
 すべての財産を配偶者に相続させるつもりの方は、遺言を書いておく必要があります。

⑥ 事実婚の場合

 戸籍上の配偶者でないと法定相続人になれません。
 内縁の配偶者に遺贈する遺言を書いておく必要があります。

⑦ 相続人がいない場合

 相続財産管理人が選任され、特別縁故者がいない限り、財産は国庫に帰属することになってしまいます。

⑧ 特定の親族に介護してもらっている場合

 嫁は法定相続人ではないので、嫁に財産を与えるには、遺言を書く必要があります。

⑨ 生前に特定の子供だけに多額の援助をしている場合先妻のこと

 特別受益を考慮した遺言を書く必要があります。
 遺言で、特別受益の持ち戻しの意思を表示する方法もあります。

⑩ 事業を継ぐ子どもに財産の多くを残したい場合

 事業承継者に何を承継させるかを決め、遺留分に配慮しておく必要があります。

⑪ 遺産を与えたくない相続人がいる場合

 遺言により相続人の権利を奪えることもあります(相続人の排除)。