相続で感情的に揉めてしまう原因を考えるにあたっては、「人の感情は参照基準点で決まる。」という行動経済学の考えが参考になると思います。参照基準点とは、人が心の中で期待している基準です。例えば、同じ金額のボーナスをもらえたとしても、予想額よりも実際にもらえた額が多ければ喜び、少なければ残念に思うでしょう。相続においても、人は相続できる金額を期待したりしています。そして、参照基準点よりも実際に相続できる金額が低いと不満な感情を抱きがちです。
しかし、行動経済学者によれば、この参照基準点は比較的容易に変化するとのことです。もし、相続に対する誤った認識をもとに、参照基準点が高くなっているのであれば、早めに正しい理解をしておくことが、深刻な争いとなることを防げるはずです。例えば、被相続人の介護をしたことで多額の寄与分を主張できると誤解している人がよくいますが、そのような人には、寄与分の意味を正確に把握してもらうことが大事な第1歩となるでしょう。