遺産分割協議を始める前に知っておいて欲しい17の情報

遺産分割協議書に印鑑を押す前にご相談下さい

 相続に関することで困っているけど、どのタイミングで弁護士に相談するべきか分からない方も多いかと思います。そこで、ある典型的な事例をまとめました。弁護士に相談する前からの対応方法としてもお役に立てていただければ幸いです。
 ただし、遺産分割協議書に印艦を押してしまえば、事実上、すべて終了です。納得がいかないまま、印鑑を押すことは絶対に避けなければなりません。遺産分割案に納得がいかない場合には、遺産分割協議書に印鑑を押す前に、必ず弁護士に相談して下さい。
 その他、赤字記載の状況になったときにも、早めに弁護士に相談してください。

 その際は、緑色の文字記載の資料をお持ちいただけると有益です。

btn01

1701

※以下、水色の文章をクリックすると詳細が表示されます。


父親が病気で倒れる。

 ↓ 

(父親の生前)

  • お父様が病気で倒れ、お兄様に通帳とキャッシュカード等を預けて、支払い等を任せるようになることがあるかと思いますが、後のトラブルを防止するためには、その都度、お父様が確認するようにしておいたほうが良いでしょう。
  • お父様のキャッシュカードで引き出したお父様の預貯金を、お兄様が自分のものとして使用している可能性があるのであれば、財産の管理の状況について説明を求めてください。特に、お父様が危篤状態に陥った場合には、慌てて払い戻しをすることがありますので、注意が必要です。お兄様が払い戻した預貯金をお父様のために使用せず、自分のものとしている恐れがあるのであれば、お父様の後見人を選任するなどの方法が必要かもしれません。成年後見の申し立ては、下記からダウンロードした申立書及び添付資料を家庭裁判所に提出することで、行うことができます。ただし、お兄様が、使途についてあまり説明をしない場合には、成年後見申立に反対するでしょうし、資料収集も容易ではありませんので、弁護士に相談することをお勧めします。弁護士に相談される際には、お兄様が説明のために渡した資料、お父様の預貯金通帳のコピー(そのほか、お父様の資産に関する資料等)をお持ちください。 
    http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/koken/seinen-koken/index.html

    btn01

  • 平成27年1月1日以降の相続から、相続税の基礎控除が少なくなりました(従前は、5000万円+1000万円×法定相続人の数でしたが、平成27年1月1日以降から、3000万円+600万円×法定相続人の数で計算します)。これにより、相続税を負担する人の割合が大幅に増加しました(都市部では、戸建ての家を持っていると相続税がかかる、とさえ言われているほどであり、相続税対策は一部の資産家だけの問題ではなくなってきています)。相続が発生するよりも前から、相続税が発生するのかどうかを調査し、できる限り早めに対策を立てて置くことが望ましいとされています。このような相談は、税理士にするべきです。

 ↓ 

死亡

 ↓ 

(父の死後)

  • お兄様・お母様との間で、お父様の遺産をどのように分けるか話がまとまれば、弁護士に頼まなくても大丈夫です。
    遺産の中に不動産が含まれるのであれば、司法書士に登記を依頼し、その際に、遺産分割協議書案を作成してもらうと良いでしょう。不動産が含まれない場合には、行政書士等に遺産分割協議書案の作成をお願いする人もいます。さらに、専門家を頼まずに、ご自身で、遺産分割協議書を作成し、登記手続きを行っている人もいます。
  • 遺産分割協議をスタートさせるには、分割の対象となる遺産がはっきりしていることが大前提です。
    お兄様がお父様の財産を把握していたのであれば、まずは、遺産とその資料の開示を求めましょう。お父様の財産の一覧をまとめたもの(遺産目録)と同時に、それらの資料(預貯金は預貯金通帳、不動産は登記事項証明書、賃貸借契約書等 そのほか、株式、ゴルフ会員権等)も開示してもらってください。
    もし、お兄様が金融機関に対して、届出をしていないのであれば、金融機関にお父様の死亡を通知して(電話で対応してくれるところもあります。)、口座を凍結してもらいましょう。
    なお、保険金は法律上の遺産ではありませんが、特別受益の問題になることもありますので、お兄様が保険の受取人になっていないか、証券で確認したり、保険会社に調査しておいた方が良いでしょう。
  • 遺産目録に漏れがあると思われる場合には、更にお兄様に説明を求めます。それでも、納得いく説明を受けられない場合には、こちらで調査できるものは調査した方が良いでしょう。
    不動産に関しては、都税事務所から、お父様宛てに「固定資産税都市計画税納税通知書(土地・家屋)」が届いていると思います。賃貸物件がある場合には、「賃貸借契約書」を入手します。
    預貯金に関しては、金融機関に出向いて、「残高証明書」を取得します。その際、戸籍謄本(お父様と相談者の戸籍謄本)の提出が必要となります(なお、戸籍謄本は、本籍地のある市役所に出向くか郵送で取得手続きを行います。)。残高証明書の基準日は、死亡日で良いと思います。お兄様が財産を管理していた場合には、手数料がかさみますが、「取引履歴一覧表」(最大、10年前まで遡ることが可能です。お兄様がお父様の財産を管理するようになってから現在に至るまでの分を取得してください。)を取得しておくことをお勧めします。
    その他、お父様が経営していた会社の株式を保有していないか(自社の株式の有無)、証券会社を通じて株の取引をしていなかったか(公開株の有無)等を確認します。株主名簿管理会社から手紙が届いていることもあります。

    上記の調査をして得た資料と、お兄様が出してきた遺産目録を照らし合わせ、遺産目録に漏れている財産がないか、正確な記載がなされているか調査します。例えば、お父様の年金が支給されていた(または、家賃、固定資産税、水道光熱費等を支払っていた、家賃や株式の配当を受けていた)はずの預貯金口座が落ちていないか等をチェックしていきます。そして、遺産目録の内容に関して納得することができそうであれば、次に、それをどのように分けるかという話に進みます。
    しかし、お父様の遺産の一部をお兄様が隠していると思われる場合(例えば、金融機関の入出金履歴からは多額の払い戻しがあり、お父様は多額の現金を保有していたと思われる場合)等には、弁護士に相談することをお勧めします。
    btn01

  • お兄様がその通帳(キャッシュカード)を管理していたのであれば、その引き出し行為は誰が行ったのか確認します。お兄様がお父様のために払い戻ししたと主張するのであれば、使途に関する証拠(病院や施設への支払いの明細等)を出してもらいます。証拠がないが生活費に使ったと言う場合、お父様が倒れて金融機関に行くことができなくなった時から、現在までの間に引き出された預貯金の合計額を計算して、生活費として使ったという主張に合理性があるかどうか調べても良いでしょう。
    使途に関するお兄様の説明に納得いかない場合には、弁護士に相談した方が良いです。お父様のすべての通帳のコピー、お兄様が作成した説明書類、お父様の認知症の進行が分かる資料(医師の診断書、要介護状態が分かる資料等)がありましたら、お持ちいただけると参考になります。
    btn01
  • お父様のプラスの財産が借金よりも少ないのであれば、家庭裁判所に相続放棄の申述をしたほうがよいでしょう。申立書は下記からダウンロードできます。その他、戸籍謄本等を取得して添付します。
    http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/syosiki01/index.html
    相続放棄の申述をすることができるのは、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内」です。死亡後3カ月経過してから、金融機関から請求書が届いて借金の存在を知った場合などでも、相続放棄が認められることがありますので、このような場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
    お父様のプラスの財産が借金よりも多いか少ないか調査するのに3カ月以上の時間がかかる場合には、熟慮期間の伸長の申立てをしておいた方が良いでしょう。
    btn01

  • ⑥兄が自分は長男であるので、遺産分割協議書にハンコ代だけで印鑑を押せと言っている。

    遺産分割協議書に印艦を押してしまえば、事実上、すべて終了です。納得がいかないまま、印鑑を押すことは絶対に避けなければなりません。お兄様が出してきた遺産分割案に納得がいかない場合には、遺産分割協議書に印鑑を押す前に、必ず弁護士に相談して下さい。
    法律上、兄弟の相続分は均等とされていますが、まだまだ日本では、長男がすべて相続するもの、女性は結婚した以上、実家の相続は関係ない、判子代だけ渡せば十分という考えが根強く残っています。自己の権利を守るために、どうぞ勇気を出してください。
    btn01
  • お兄様の主張は、法律上は、療養看護型の寄与分の主張となります。寄与分が認められるには、お兄様による療養看護が親族であることから通常期待される以上の「特別」なものであり、それによって、職業看護人等に支払うべき報酬等の出費を免れた(財産の維持または増加との間の「因果関係」)ということが必要です。お兄様に、お父様の介護にあたった期間と内容、病院や施設からの請求書等を出してもらいましょう。寄与分の主張が認められるかどうかは、法律的な判断となりますので、お兄様が自分は父親の面倒を見たので取り分が多くて当然との主張に固執するようであれば、弁護士に相談することをお勧めします。その際、お兄様が渡した資料(遺産目録、遺産の資料、病院や施設からの請求書等)やお父様の介護状態が分かる資料をお持ちください。
    btn01
  • お兄様がもらった頭金は特別受益にあたり、それも相続財産に持ち戻しして遺産分割するべきであるとされる可能性が高いです。そうすると、相談者の方は、法定相続分より遺産を多くもらえるものと考えられます。但し、特別受益に当たるには、贈与が「生計の資本として」受けたものであること等が必要となります。また、諸般の事情より、お父様が、相続財産に持ち戻す必要がないとの意思を明示または黙示に示していたと判断される場合もあります。
    特別受益の該当性、持ち戻し免除の意思表示の有無は、法律的な判断となりますので、お兄様の意向に反し、遺産分割協議にあたって、お兄様がお父様から受けた生前贈与を考慮してほしいとのご希望があるのであれば、弁護士に相談することをお勧めします。その際、お兄様が生前贈与を受けたことが分かる資料(お父様の通帳、振り込み履歴、不動産をもらった場合には、その不動産の登記事項証明書や評価証明書等)をお持ちください。
    btn01

  • このようなケースでは、最終的に、お兄様が自宅不動産を相続して、相談者様とお母様に代償金を支払って解決することが多くあります。しかし、お兄様としては、御自宅はお兄様が取得し、残った預貯金等を相談者様に渡せば十分であると考えていることが多いです。お兄様が、代償金を支払うことに抵抗を感じている場合、長期戦になることも予想されます。また、御自宅の不動産の評価が一致しない場合には、鑑定を行ったり、最終的に不動産を売却する必要が生じる場合もあります。このような争いをできる限りスムーズに解決するために、弁護士に相談することをお勧めします。この場合には、遺産目録及び財産に関する資料、不動産の登記事項証明書、評価証明書のほかに、不動産業者の査定書をお持ちくださるとスムーズに進みます。不動産業者が無料で査定をしてくれますので、複数の業者から入手するとよいです。
    btn01

  • お兄様が、自筆で書かれた遺言書を保管していた場合には、家庭裁判所に検認を請求しなくてはなりません。自筆証書遺言は、遺言の内容があいまいで争いになることも多いです。自筆証書遺言の内容に疑義が生じたら、弁護士に相談することをお勧めします。また、内容の異なる遺言が複数存在する場合には、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。お兄様が出してきた遺言書より後に作成した遺言がないか探してください。お近くの公証役場に問い合わせ、遺言検索システムを利用して調査する方法があります(戸籍謄本、身分証明書等が必要です。)。
    遺言者が判断能力がない時に作られた遺言は、公正証書であっても無効です。遺言者が認知症等を発症した後に、遺言書が作成されているのであれば、弁護士に相談した方が良いでしょう。その際には、遺言書のほかに、遺言者の判断能力が分かる資料(診断書、要介護状態が記載された介護記録等)をお持ちください。
    お父様が遺言書によって、ほとんどの財産をお兄様に相続させている場合には、遺留分が侵害されていることになります。遺留分減殺請求を行うべきですが、実際の遺留分額の計算はかなり複雑で高度なものとなりますので、お早めに弁護士に相談することをお勧めします(遺留分が侵害されていることを知った時から、1年以内に行使することが必要となります。)その際には、遺言書と遺産目録をお持ちください。不動産の評価が分かる資料(不動産業者の査定書)もあると便利です。
    btn01
  • お父様の戸籍謄本を取り寄せてください。お父様が再婚されているなどして他に兄弟がいる場合、養子縁組をしている場合(お兄様の子どもが養子になることが多いです。)には、その者も法定相続人となります。しかし、お父様が養子縁組(または婚姻)をする意思がなかったと思われる場合等には、人事訴訟で無効を確認する必要があります。また、そもそも、お父様が死亡されてから、他に子どもがいることを知ったケースでは、熾烈な争いが生じることから、早めに弁護士に相談することをお勧めします。ご相談の際には、遺産目録等のほかに、戸籍謄本をお持ちください。いずれ、お父様が認知症等であったことが分かる資料(診断書、介護状態が分かる資料等)も必要となります。
    1702

    btn01

  • 遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。相続人の1人でも欠けた場合には、その協議は無効となってしまいます。相続人中に音信不通の人がいる場合には、状況に応じて、不在者財産管理人の選任申立てをしたり、失踪宣告の申し立てをする必要がありますので、弁護士に相談した方が良いでしょう。ご相談の際には、遺産目録等のほかに、戸籍謄本・住民票をお持ちください。いずれ、音信不通であることが分かる資料(例えば、ポストに郵便物がたまっている写真)も必要となります。
    btn01

  • お母様が認知症等によって、遺産分割の内容を十分に理解することができないまま遺産分割協議をしてしまうと、その協議は無効となってしまいます。従って、お母様のために成年後見開始の申し立てをする必要があります。家庭裁判所に下記からダウンロードした申立書と添付資料を提出することで申立することが可能ですが、相続が関係する場合には、財産調査や手続き面で複雑なこともありますので、弁護士に相談するという方法もあります。
    http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/koken/seinen-koken/index.html
    btn01
  • お母様に遺言を書いてもらうのが良いでしょう。最近、エンディングノートが出回り、専門家に頼まずに遺言を書いても大丈夫と考える人が出てきました。確かに、遺言書を書くこと自体は一人でも可能です。しかし、専門家に頼まずに作成してしまったために、逆に解釈の余地を残し、残念ながら、トラブルのもととなってしまっている遺言も増えてきています。自分の最後の意思を明確にして、残された人が円満に解決できるように、弁護士に相談することを強くお勧めします。ただ、遺言を書くのはお母さまですので、お母さまの意思が重要です。お母さまとともに法律事務所に相談に来られることをお勧めします。
    btn01